元自衛官として災害派遣に思う事

陸上自衛隊Facebookより

どうも。静岡・清水区結婚相談所代表の櫻田です。私は自衛隊で20年間勤務した後、結婚相談所を開業しました。本日は自衛官と恋愛、結婚について記事を書こうと思ったのですが気になる記事があったので災害派遣について私の思うところを書いていこうと思います。自衛官の恋愛・結婚に関する記事はまたの機会に。

台風19号発生に伴う災害派遣で現在も多くの隊員の方々が現地又は遠方から支援活動を行っています。現役だった頃は「当たり前」と思っていた事も退官して民間人の立場(今までと違う視点)からニュースやSNSで自衛隊の活動を知るたびに「やっぱり自衛隊ってすごいなあ」と感心します。当然隊員ひとりひとりにも家族がいます。私も現役の頃は組織の要求が第一優先。災害派遣の要請を部隊が受ければ現役の隊員は当然のように準備をし現地に向かいます。不思議なものでそういう時に限って家族が体調を崩したり普段起こらないような出来事が生起したり・・・。それでも緊急事態が迫っていることに変わりはないので後ろ髪をひかれる思いで家族に一言「行ってきます」と言って家を出ます。災害の規模にもよりますが一旦派遣されるといつ家に帰れるか検討もつきません。私が経験した災害派遣では自分の家に一旦帰る事ができたのは約1ヶ月後の事でした。これでも早い方だったと思います。それでも自衛官は「当たり前」と思ってそれぞれの任務につきますし、心の中では「いつ帰れるんだろ」と思いながらも一切口にする事はありません。要請を受けて命令が解除されるまで任務を遂行する。それが日々の訓練の中で鍛え上げられ心に沁みついていますし自衛官の「当たり前」なのです。

正式な要請がなく給水車が引き揚げる事態に

台風19号の影響で断水した神奈川県山北町で13日、町の打診で陸上自衛隊の給水車が到着したものの、県からの正式な災害派遣要請がなかったために給水車が引き揚げる事態になった。災害派遣は自衛隊法で、「都道府県知事が要請できる」と定められている。町によると、13日午前1時ごろ、約20キロ先の陸自駒門(こまかど)駐屯地(静岡県御殿場市)に、災害派遣要請を求める考えを伝えた。同6時ごろには出発できるとの返事があったため、町は午前6時半ごろ、県に申請のファクスを送った。だが、県は「自衛隊への要請は代替手段がないときにするもの。県も給水車を派遣できる」として、県の給水車を検討するよう求めた。
午前8時ごろ、陸自の給水車3台が町役場に到着したものの、正式な災害派遣要請がないために活動を始められず、午前9時前に水を積んだまま駐屯地に引き揚げた。
道路の渋滞もあり、県の給水車2台が町役場に着いたのは午後1時前だったという。湯川裕司町長は朝日新聞の取材に「町民の命と財産を守る最前線にいるのは町長。緊急時であり、時間的、距離的要因も考えて派遣を求めた判断を、県は重く受け止めてほしかった」と話した。黒岩祐治知事は16日、記者団に「自衛隊の給水車が来たことを直ちに確認できなかった。しっかりした情報があれば(自衛隊に)活動してもらった」と説明した。(引用:朝日新聞デジタルより)

災害派遣の要請条件

陸上自衛隊Twitterより

自衛隊は、天変地変その他災害に対して人命または財産の保護のため必要があると認められる場合は公共性、緊急性、非代替性の3つの条件が揃うと都道府県知事等の要請(ただし、特に緊急を要する場合は要請を待たずに)に基づき、防衛大臣またはその指定する者の命令により派遣され、捜索、救助、水防、医療、防疫、給水、人員や物資の輸送など、様々な災害派遣活動を行うとされています。今回の件で取り沙汰されている点は非代替性(県が給水車を準備できる状況にあった為)要請の要件に合致しないと県が判断したが県、町長、自衛隊の情報の伝達が上手く図れないまま既に現地に到着していた自衛隊が活動できなかったという点です。現地に到着した隊員は活動する事ができず「なんとも言えない顔で帰っていった」「なぜ水が届いたのに貰えないのか?」と住民の方が話していたそうです。阪神淡路大震災で要請に時間がかかり初動が遅れたのを教訓に自衛隊は正式な要請を待たずに準備を整え、都道府県もすみやかに要請するよう改善が進んでいる中での今回の事案。実に嘆かわしい。前述した通り現地に派遣される隊員は自分の家族の事より国民の生命、財産を守る為任務遂行を優先させ現地に向います。町長も町民の為に少しでも早く給水支援を要請するべきと判断し要請を実施しました。県は自前の給水車があるから対応できると判断し要請をしませんでした。結果現地に到着した給水車が活動できずに帰路につく。目の前に困っている人、助けを求めている人がいて、助ける術(物資)があるのに提供できない。みなさんはどうするのが最善の策だったと思いますか?

今後の課題

多くの人が要請が無くても給水活動してあげれば良かったのでは?とお考えになると思います。その思いは現地に到着した隊員が一番強かったと思います。これは元自衛官の私個人の意見ですがそれが出来ない現実もあるのです。自衛官は命令で動きます。出動するにも撤収するにも命令が下ります。命令に背くことは絶対にあってはなりません。今回も現地の隊員には撤収命令(給水活動ができない)が命下されていたようです。「なんとも言えない顔で帰っていったよ」想像に難しくない顔をされていたことでしょう。防衛、災害派遣に関わらず初動は非常に重要です。昔の教訓からシステムをより合理的かつ迅速に法改正がなされてきているのも事実です。しかしながらそれでも綻びが出てきてしまいます。今回の事案を未来への糧とするべく早急な対策をして頂きたい。災害はまたいつ起こるかわかりませんから。